華道家元池坊いけばな教室 花空間 +++渡辺伯櫻+++

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ブログ 花ごころ

  • 一首。 2010/01/13
  • 朝ぼらけ 有明の月と見るまでに
      吉野の里に 降れる白雪

    父はこの歌を好んでいました。

    幼い頃から高校生を卒業するまで、我が家ではテレビ禁止でした。
    特別な番組(父が許可した番組!)を除いて。

    厳しい〜!

    テレビ全盛期にテレビ無しの生活・・・けっこうシンドイものがありました。

    でもその代わり、いろんなことに触れていたんじゃないかと思います。

    史書や図鑑、漢詩や天文学の本、ミステリー・・・
    とにかくいろんなジャンルの本が、書棚にギュウギュウ詰まっていました。

    それを真面目に、真剣に読んでいたなら、
    私は今頃、何かの分野の博士になっていたかもしれないのですが、
    生憎・・・パラパラ呑気にめくっていただけで・・・(笑)

    あれだけの本を収集するのは、さぞ大変だったろうと・・・
    今ではちょっと後ろめたい気がしています。

    本を読んだり(ただ見たり)するのは、いつも一人だったわけですが、
    父が積極的に関わってくれたことがあります。

    百人一首。

    お正月〜節分あたりまでの、我が家の恒例行事でした。

    父の詠む声は、本当にしみじみとした風雅な声で、
    幼いながらに「百人一首を詠む時の父は別の人みたい」なんて、
    こっそり思っていました。

    冒頭の一首。

    父にしてみれば、いろんな思いが凝縮した一首。

    今はもう聞けない父の声。

    この一首を詠んでいると、父の声が耳の奥底に余韻として残っているような・・
    そんな切ない思いになります。

    今夜半から、雪が降るそうです。

    有明の月は、さぞ美しいことでしょう。